グループ実習教材の開発

体験学習のためのグループ実習教材の開発  

 筆者はこれまでに、一般教養科目社会学の授業に取り組んできた。講義形式の授業は、とかく教師から学生への一方的な知識の伝達のみに終始しがちである。この弊を減らして学生参加型の授業にすべくグループ体験学習の手法を取り入れてきた。
 そのネライ(学習目標)は、グループ内コミュニケーションのあり方・ヒューマンリレイションズのスキル・チームワーク・リーダーシップ・グループ内コンセンサスの形成・協働作業のシナジー・価値観の明確化・自己理解etc.について学ぶことにある。
 授業科目名に社会学という看板を掲げれば、その授業で扱い得ることは、日本の社会のなかで起きている出来事のあらゆる事柄に及ぼう。そして、それらの様々な出来事を、社会的行為・役割・集団・組織、そして社会制度に関連づけて論ずれば社会学的視角からの言わばマクロな社会学たり得る。これに対して筆者の場合は、ミクロな視点からの社会学として“この授業の教室のなかで、どんな出来事が起きているのか”について学生たちを着目させ、価値・規範・役割・状況的便益を切り口とする微視的社会学を心掛けてきた。
 グループ・ダイナミックスの創始者クルト・レヴィンは、1939年に「私は社会学において実験を企てることが可能であると信じている。それは物理学や化学の実験と同じように、科学的な実験とよばれるだけの権利をもつものである。」と期待をこめて明言した。(注1)
 筆者としてはこの提案に倣い、授業の教室をラボラトリーに見立てて小集団を構成し、その集団活動のなかに起きる様々な出来事から学ぶグループ体験学習を実践してきたのである。



注1 K.レヴィン 末永俊郎訳『社会的葛藤の解決−グループ・ダイナミックス論文集−』1967年12月30日 東京創元新社 p.94